学修成果の可視化の主語は「学生」
学修者本位の体制構築とK-PORTを通じて学生
個人の成長の可視化を実現

学生指導

学修・教育開発センター(CRED)

兼古 昭彦教授

丸山 毅課長

宮 東城副課長

神保 正典副課長

導入目的

  • 学修・教育開発センターが中心になって全学的なアセスメントを選定。アセスメントに関する年間スケジュールやアクションプランワークシートを用意し、各学科が自己点検・評価に取り組みやすいサポートを進める。
  • 学修成果の可視化は一貫して学生主体で考え、ポートフォリオ「K-PORT」を構築。学生自身が目標を立て、アセスメントの結果をはじめとした成果を振り返り、次の学修へと向かうサイクルを回せる環境を整える。

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大学の紹介

東京家政大学は家政学部、栄養学部、児童学部、人文学部、健康科学部、子ども支援学部の6学部を抱える東京都の私立総合大学。関東地方で人気を集める女子大学の一つでもある。
同大学では、学修・教育開発センター(CRED)が中心になって学修成果の可視化を進めている。その特徴は、一貫して学修者本位の教育という視点で、可視化した成果を学生へ還元している点だ。いつから、どのような流れで取り組みを進めてきたのか、具体的な取り組み内容や、外部アセスメント「GPS-Academic」の活用方法なども含めて、兼古昭彦 教授(CRED所長)、丸山毅課長、宮東城 副課長、神保正典副課長にお話を伺った。

※所属・役職はインタビュー当時(2023年10月12日)のもの

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お取り組みの流れと背景

学修成果の可視化に向けて、いつから、どのようなお取り組みを進められていますか。

兼古教授:本格的に学修成果の可視化に取り組み始めたのは2017年から。以来、これまでに大きく分けて3つの学修成果指標を全学的に導入してきました。一つは大学IRコンソーシアムの学生調査「一年生調査」と「上級生調査」。どちらも一般的な学力の向上について質問している項目が含まれているアセスメントですので、一つ目の学修成果指標としました。次に、本学で独自に行っている「達成度アンケート」。これは学科単位で実施するアンケートで、学科のディプロマ・ポリシーと紐づく形で質問項目を作成しています。最後に「GPS-Academic」。これらの調査結果を各学科の自己評価実施委員会へと提供し、各学科がエビデンスにもとづいた自己点検・評価を毎年度実施する、という形を取っています。
神保氏:また各学科が自己点検・評価のPDCAサイクルを回しやすいよう、年度初めに自己点検・評価に関する年間スケジュール(図1)と、各学科で都度記入していただくアクションプランワークシートもCREDから提供しています(図2)。具体的な取り組みは各学科に委ねる部分が多いのですが、こうした形でCREDが立ち回ることで、全学で一定水準以上の可視化ができるよう努めています。

様々なお取り組みを進められる中で、他の先生方から反対の声はあがらなかったのでしょうか。

兼古教授:多くの先生方が非常に協力的です。それもCREDが中心になって、毎年教職員研究会という改革に向けたFD・SD行事を行っているために、考え方を広く共有できているのが大きいでしょう。また全ての施策が「学生」主体で考えられているため、先生方は協力的なのだと思います。

GPS-Academicはどのような理由で導入されたのでしょうか。

宮氏:大学IRコンソーシアムの学生調査も、達成度アンケートも、いずれも間接評価のためのツールであり、直接評価ができるツールがなかったからです。そういった事情もあって、GPS-Academicのリリース情報を得てからすぐに導入を検討し始めました。他のアセスメントに比べて、GPS-Academicは汎用的な学力を測る面が強い点が好印象でした。また学生・教職員の双方にとって負担が少ないCBT形式なのも魅力でした。

年間イベントスケジュール

図1:年間イベントスケジュール

アクションプランワークシート

図2:アクションプランワークシート

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具体的なお取り組み

東京家政大学は可視化した学修成果を積極的に学生にも還元しています。そのお取り組みの一つである、K-PORTについてお聞かせください。

丸山氏:K-PORT(図3)はいわゆる学生ポートフォリオの一種です。本学はカリキュラム・ポリシーにおいて、評価に関して次のように謳っています。
「ディプロマ・ポリシーに示した教育目標を達成するために、毎年度、学生自身が自己目標を設定したうえで学修を進め、その成果としての各科目の評価および総体としてのGPAをもとに自己評価を行い、それに対する各学科の担当教員のコメントによって学修成果のアセスメントを行います。」
そもそも学修成果の可視化は、単に教職員がデータを把握できればいいわけではありません。学生自身が、自らの成長を自らの言葉で表現できる、その一助となるべき取り組みです。だからこそカリキュラ厶・ポリシー上でもこのように謳っているわけです。そしてそのポリシーを実現するためのシステムが、K-PORTです。
K-PORT上にはGPS-Academicをはじめとした各種アセスメント・アンケートの結果やGPAなどが自動で表示されるほか、学生自身が資格試験の結果やボランティア活動の成果を記入できます。加えて、これが特に重要なのですが、学生が自身で目標と振り返りを入力する欄があります。毎年度の初めに目標を立て、年度末に振り返りを行う。そしてその目標と振り返りに対して、学科の教員がコメントする。この目標設定・学修・自己評価・教員によるコメントのサイクルを循環させることで、学生の主体的な学修をサポートするのがK-PORTの大きなねらいです。
 また教員用の画面では、個々の学生のデータや学科単位の傾向を確認できます。また成績評価とカリキュラムチェックリストを対応づけて、学科や入学年度別のDP達成度をレーダーチャート形式で把握できます。

K-PORT

図3:K-PORT

学生が目標を立てやすいよう、サポートされていることはありますか。

宮氏:GPS-Academicの受検後ガイダンスで、結果を振り返り、今後の学修目標を立てるワークを行っています。そのときに、考えた目標をK-PORT上にも記入するようアナウンスしています。

K-PORTとは別に、オープンバッジというお取り組みもあると伺っています。

丸山氏:「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」およびその基幹科目である「データサイエンス」基礎を修了した人に授与するデジタル修了証を、本学ではオープンバッジと呼んでいます。学位よりももっと細分化された単位で、学んだ内容の証明ができるシステムを取り入れたいと考えていました。特に本学は女子大ですので、大学卒業後、妊娠や出産によるキャリアの断絶を迎えてしまう卒業生が多くいます。従来は資格が復帰の手助けをするものですが、それ以外にも大学として手がかりを用意してあげたいという気持ちで取り入れました。
神保氏:取得したオープンバッジはK-PORT上にも表示されます。自分は何ができるのか、学生が自信を持つきっかけにもなればと考えています。今はまだ一つのプログラムでしか発行していませんが、今後は順次増やしていく予定です。

GPS-Academicについて、結果の説明や結果にもとづく指導はされていますか。

宮氏:先にお話した受検後のガイダンスに加えて、キャリアガイダンスでもGPS-Academicの結果を使った自己分析セミナーを行っています。あとは、例えば実習に行く学生に対して、GPS-Academicの結果から考えられる実習上の課題を個別に話すなど、学科ごとにユニークな使い方をしています。毎年教員向けの結果分析報告会など行っており、個々の先生方が工夫して活用を進められています。

GPS-Academicの活用について、今後の展望をお聞かせください。

兼古教授:学生が学修成果を自己点検し、より主体的に学修していくという面では今も十分活用できていると考えていますが、一方で学修がうまくいっていない学生へのフォローという面ではまだまだ活用の余地がありそうです。今後は学修に不安を抱いている学生や退学しそうな学生により早く教員が気づけるよう、GPS-Academicを取り入れた仕組みを考えていく予定です。