問題解決力育成の第一歩は、コンピテンシーの共通言語化
マーケティングコミュニケーション部 マーケティング統括 課長 張洋美 様(右)マーケティングコミュニケーション部 ソリューションセンター 課長 松山武史 様(左)

- 社名:エプソン販売株式会社
- 業種:情報関連機器販売
- 従業員数:1,610名(2026年4月1日現在)
- GPS-Businessご利用の目的:人材育成
プリンターやプロジェクター、商業・産業向け機器、会計・財務ソフトなどを扱うセイコーエプソングループの国内事業会社。近年は商品提供に加え、お客様の課題解決を支援するソリューション提案・創出にも力を入れており、2026年10月には社名を「エプソンジャパン」へ変更する。
こうした変革をさらに加速するためには、社員一人ひとりが問題解決力を身につけ、実践できる組織づくりが欠かせない。そこでマーケティングコミュニケーション部では、全メンバーの問題解決力向上に向けた取り組みを開始した。
この企業の活用ポイント
- ・業務変革に向けた個々の社員の現在地を、部署と社員の双方が把握
- ・業務の成果とコンピテンシー(能力・特性)の関係を整理。思考力を「成果を支える土台」の一つとして捉え、育成施策に活用
- ・測定項目を業務に紐づけ、管理職とメンバーの対話を進める共通言語を形成
導入前の課題
感覚だけではつかめない、社員の強みと伸びしろ
マーケティングコミュニケーション部の業務内容を教えてください
松山様:セイコーエプソンの商品やサービスの価値を社会に伝える部署で、30人超が在籍しています。
私が課長を務める「ソリューションセンター」は、従来のように商品を体験いただく場にとどまらず、顧客課題を起点にした提案を具体化する場への転換を進めています。リアルな接点を活用しながら、お客様の課題を深く理解し、その場で価値を実感いただき、課題解決策の提案につなげていく――お客様との対話を通じて新たなソリューション創出を担う場としての役割を担おうとしています。
張が課長を務める「マーケティング統括」は、業務ルールの主管として広告・販促物のリーガルチェック、WebサイトやSNSの運用管理など、マーケティング全体を支えています。加えて、市場や会社の変化に合わせて業務の仕組み自体を見直し、新しい運用を設計していくことも求められています。
どのような課題がありましたか
松山様:以前は、プリンターなら「速い」「きれい」など、商品そのものの強さでお客様から選んでいただけました。しかし、近年は商品力に加え、お客様が抱える課題に向き合って解決策を提案する、ソリューション型の業務スタイルが求められるようになってきました。
張様:ビジネススタイルを変えるということは、私たち自身の仕事のやり方も変えなければなりません。社員に変革を促そうと、当初はスキルの棚卸や動機付けなどを手探りで進めていました。
しかし、そのうちにこれは人材育成の話だと気づきました。感度の高い優秀な人は変化に対応して活躍する一方で、「なぜ急に違うことをやるのか」と感じる人もいる。また、企画を立てたりルールをつくったりする一部の人やリーダー層だけが変化を意識しても、それらを実行、運用する現場の社員が変化を意識しなければ、部署としての仕事のやり方は変わらない。部署全体で変革に貢献するために、メンバー全員の能力の底上げに取り組み始めました。
GPS-Businessを選定した理由をお聞かせください
張様:ソリューション型の業務スタイルをめざすなら、伸ばすべきは社員全員の問題解決力であろうと考えました。ただ、管理職がメンバー一人ひとりの問題解決力を把握し、育成するのは簡単ではありません。まずは各社員の現状の強み、弱みを把握しようとアセスメントを探し始めて、GPS-Businessに出会いました。
測定項目である「思考力」や「パーソナリティ」は問題解決に不可欠な要素で、私たちが測りたいものと一致していました。管理職が人事に活用するだけでなく、現場メンバーが自身の特性を把握し、主体的に力を高めていく使い方が想定されている点にも魅力を感じました。
また、私たちはアセスメントの運用経験がほとんどありませんでしたが、受検結果の扱い方や社員への伝え方も含めて伴走的なサポートがある点も、安心して導入できた理由です
活用方法
日ごろの業務成果とアセスメントのスコアのギャップにヒントが
アセスメントの実施にあたり、どのような準備をされましたか
松山様:まず、メンバー全員を対象に説明会を開きました。そこで丁寧に伝えたのは、「なぜ今この取り組みが必要なのか」という背景です。
市場環境が変わり、販売のプロから問題解決のプロへと役割のシフトをめざしていること、そして、今回の取り組みは評価のためではなく、成長につなげるためのものであるということを時間をかけて共有しました。
アセスメントの結果を見てどのように感じましたか
松山様:最初に直面したのは、各メンバーの普段の仕事ぶりの印象とスコアのギャップです。メンバーからは「思った以上に低かった」との声が多く、私たちから見ても、「この人ならこれくらいだろう」と想定していたスコアとは、上ブレも含めてギャップが多々ありました。メンバーのことはよくわかっているつもりだったので、結果をどう受け止めればいいのか、かなり悩んだことを覚えています。
張様:私たち管理職側が感じたギャップの理由は、「仕事の実力や成果」と「アセスメントのスコア」が相関すると思い込んでいたことにありました。
アセスメントは、仕事の成果物を直接評価しているわけではありません。優れたスキルやパーソナリティがありながら仕事に活かせていない人もいますし、逆にスキル不足やパーソナリティの偏りを自分なりに補って仕事で成果を出す人もいる。ベネッセ i-キャリアの担当者と話す中で、このギャップにこそ、アドバイスや育成のヒントがあると気づきました。
松山様:個々のコンピテンシーと業務の成果との関係を考えるうえで、それらを整理したピラミッド図(図1)が非常にしっくりきました。
思考力というのは、成果を生み出す能力体系の一部をなすもの。実際のアウトプットは、パーソナリティ、業務知識、役割スタンスなど、複数の要素が重なって生まれます。
アセスメントの結果とピラミッド内の他の要素を合わせて見ると、その人にどんなサポートが必要なのか、何を伸ばすとより成果につながるのかを考えることができます。
結果の返却方法について教えてください
張様:まずは、私たちマネジメント層も結果に驚いていることを率直に伝え、「このギャップについて、一緒に考えていきましょう」というスタンスで対話することを心がけました。組織全体の課題として立場を超えて向き合う姿勢を共有したんです。
そして、各課からメンバーに対し、GPS-Businessの測定項目が自部署の業務にどう影響するのかを整理して示しました(図2)。
「マーケティング統括」で言えば、例えば「批判的思考力」は「ルール適応の判断プロセスを文書化し、チームが再現可能な形に落とし込む」際に必要な力であると位置づけています。
松山様:そのうえで、個人結果レポートの詳細版をメンバーに返却し、一人ひとりと面談を行いました。
GPS-Businessの個人結果レポートには、概要版と詳細版の2種類があります。詳細版を渡すと混乱するだろうと考えていたのですが、メンバーの側から「ショックを受けてもいいので、詳しく知りたい」という声が上がりました。私たちが思う以上に、自身のコンピテンシーを把握しようという意欲が強く、驚きと喜びを覚えました。
面談ではどのようなお話をされましたか
松山様:ピラミッド図を見ながら、「あなたは協働的思考力が強みなので、それを活かして役割スタンスを果たしていこう」とか、「君は思考力が少し低かったけれど、ポータブルスキルが強いから、ピラミッド全体で見るともっと伸びるよ」といった伝え方をしました。
アドバイスの趣旨は、自分の強みと弱みを認識して、ピラミッド全体のバランスを考えながら成果を最大化させることです。目的はあくまで業務の成果なので、スコアそのものにはこだわり過ぎないようにしました。
張様:私のほうでも、ピラミッド図はメンバーとの認識合わせに役立ちました。部署のメンバーは、仕事のスキルというと部署に固有の業務知識をイメージしがちなんです。でも、変わっていくためには、ポータブルスキル(業種や職種を問わず通用する汎用的なビジネススキル)や、思考力のような汎用的能力の伸長も欠かせません。
「業務知識も大事だけど、期待されているのはこういう活躍で、今、足りないところはここだから、こう伸ばそう」と、今後の行動計画について話しました。
成果と展望
同じ言葉で語るから、課題も目標も共有できる
取り組みを通じて、どのような変化がありましたか
松山様:最も大きかったのは、組織内に共通言語が生まれたことです。以前は「問題解決力を高めよう」と言っても、人によってイメージしているものが違っていました。今は「批判的思考力」「レジリエンス」「役割スタンス」などの用語を使って会話できるので、指導やアドバイスが具体的になりました。
何かを指摘するときも、「この場面では創造的思考力を意識したいね」といった伝え方をすると、個人を責めるような形にならず、言われた方も「ああ、あのことか」と理解しやすくなります。
張様:自社の人事制度の中に能力開発目標を設定するしくみがありますが、これまでは何を目標にすべきかを十分に説明しきれないことがありました。共通言語ができたことにより、どのような力が必要なのか、その力同士がどう関わっているのかを整理して伝えやすくなりました。
今後はどのように活用を広げていきたいとお考えですか
松山様:今はあくまで現在地が数値化された段階です。誰のどの能力をいかにして高めていくかが、マネージャーとしての腕の見せ所です。
ベネッセ i-キャリアからアフターフォローの一環で、個々人による結果の振り返りと、GPS-Businessが測る思考力のトレーニングができる、e-learning(学習動画)メニューを提供してもらっているので、社員には各自が必要と感じる動画を視聴するように勧めました。今後の能力育成の過程で、メニューを見ながら、重点的に伸ばしたい思考力について話し合うこともできそうです。
張様:他部署とのコミュニケーションの中で社員育成の話題が出ると、今回の取り組みを紹介しています。汎用的能力をいかにして伸ばすかについては、どの部署も課題感を持っているようです。
特にメンバー数が多い部署の管理職に対して、「各メンバーの現在地を把握するツールになる」という説明が響いています。現在、サービス・サポート本部がGPS-Business導入を検討しているようです。
松山様:こうした取り組みは、部門内だけの改善にとどまるものではありません。商品起点のビジネスから顧客課題の解決へと軸足を移すには、全社員一人ひとりの問題解決力の底上げが不可欠です。私たちの取り組みも、そうした全社的な変革の流れと連動していると考えています。
マーケティングコミュニケーション部としては、GPS-Businessで得た気づきを一過性で終わらせず、日々の対話や挑戦を通じて問題解決力を高めていきたいと考えています。私たちが実践を先行し、変化を前向きに受け止めながら、会社全体の進化を後押しする存在になれればうれしいですね。

