評価から
教育内容を変えていく――
GPS-Academicを授業設計にも役立てたい

教学改善

看護学部 准教授

工藤 真由美先生

導入目的

  • 看護学教育認証評価の制度化にあたり、質保証の客観的指標として採用
  • 新たに策定するDP(※1)・CP(※2)を検証するアセスメントとしても期待
  • 「思考力」を養う基礎教養科目の到達状況を可視化するツールが必要だった

point
01

新たなDP・CP策定のための学修目標を設計する際の根拠として、4年生から導入開始

超高齢化社会を迎えた日本において、看護職へのニーズはますます高まっています。看護系大学・学部は、2018年4月に全国で266校・278課程となり、ここ30年間でその数は25倍に増加しました。こうした背景を受け、大学で行う看護学教育の質保証に大きな関心が集まっています。岩手県立大学看護学部でもDP・CPを再検討し、教育の質保証と独自性の追究に力を注いでいます。
DP・CPを再検討するにあたり、現状を把握するための客観的な指標が必要になります。そこで、従来のアセスメントとは違う、学生の思考力や姿勢・態度などを評価できるツールを探していた中で、学会発表をきっかけにGPS-Academicへ興味を持ちました。
まず、2017年7月に当時の看護学部4年生全員にGPS-Academicを受検してもらい、岩手県立大学の教育によって身についた素養を分析しました。GPS-Academicのほか、参考にしたのは看護系大学協議会が示した「看護学士課程教育におけるコアコンピテンシーと卒業時到達目標」に関する各学生の間接評価、1年から4年までの実習経験などのデータなどです。これらを根拠としながら、岩手県立大学看護学部が輩出する看護師が身につけるべき力を6つに分類し、それを新たなDPの学修目標に反映しました。

point
02

3ポリシーに加え、アセスメントポリシーも設定し、
GPS-Academicの客観データも活用しカリキュラム改善に活かす

近年は、AP(※3)・CP・DPの3ポリシーを策定する際に、授業内容や学修成果を検証する「アセスメントポリシー」も重要になります。そこで、新たなDPに掲げた6分類の到達目標のうち「DP1 学びの主体者となり、クリティカルに思考し、論理的に表現できる」に関する分類を評価する指針としてもGPS-Academicを導入しています。導入の決め手になったのは、「考える力」を直接評価で可視化できることです。例えば、1年次開講科目の「基礎教養入門・学の世界入門」の到達目標は、「クリティカルシンキングを基盤に読むこと、書くこと、発言することができること」としています。科目の評価・検討をする際に、GPS-Academicの客観的なデータをもとに学部内で議論できるようになるのは、非常に有意義だと思います。加えて、同時に確認する学生の学びの姿勢・態度のデータとの関連からどういった姿勢・態度の学生がどのような学修経験をしているかを知ることができ、学修支援を考えるうえで有効なデータとなりえます。
2018年5月には、看護学部1・2年生全員がGPS-Academicを受検。今後は、毎年同じ時期に受検できる機会を設け、集計データを学生の成長の可視化、DP・CPの検証、カリキュラム改善などに役立てていくつもりです。
学生たちが巣立っていく看護の現場は、医師からの指示により動くことが多い環境であるのは否めません。ただ、そこで「指示待ち」にならず、自由な発想で仕事の効率化を提案し、周囲に流されずに倫理的な判断を行い、且つ論理的に発言し、より質の高いケアを創造できる力が今後ますます求められます。これらの基盤になるのは「考える力」です。そのために大学の看護学教育で何ができるのか……新たなカリキュラムを検討する際に、GPS-Academicが示す客観的なデータは大いに参考になるでしょう。ここで得た知見を学部のIR活動に反映していくことが、岩手県立大学看護学部の独自性の追究にもつながっていくと考えています。

※1 ディプロマポリシー
※2 カリキュラムポリシー
※3 アドミッションポリシー

図C : 岩手県立大学 看護学部 教育課程検討委員会での作業の全体像(※大学より頂いた資料を基に一部編集)

図C : 岩手県立大学 看護学部 教育課程検討委員会での作業の全体像(※大学より頂いた資料を基に一部編集)

図D : 教育評価システム(アセスメントポリシー)の構築について(※大学より頂いた資料を基に一部編集)

図D : 教育評価システム(アセスメントポリシー)の構築について(※大学より頂いた資料を基に一部編集)