医療人に不可欠な「考える力」を
学部全員受検で客観的に把握する

教学改善 学生指導

医学部 専任講師/理学博士

久保田 真理先生

導入目的

  • 思考力を鍛えることを重視した、1年次の化学の授業の効果検証のため
  • 上記授業の改善に使用するため
  • 学生に現段階での自分自身の思考力の程度を認識してもらい、思考力を育むことを意識して学生生活を送ってもらうため

point
01

「考える力を伸ばす」ための授業とGPS-Academicの評価基準に親和性の高さを感じた

医学部の初年次教育のうち、私が担当する「化学Ⅰ」「化学実験」という必修科目でGPS-Academicを活用しています。初めて導入した今回(2018年4月実施)は、授業時間を利用して1年生全員に受検してもらいました。以前より「考える実験」と題して、化学実験を通して考える力を鍛えるトレーニングを行っています。テーマに応じた実験方法を自分たちで考え、「なぜそうなるか?」を掘り下げた考察を行う授業です。
難関と言われる慶應義塾大学医学部には、優秀な学生が集まるものの、インプット中心の考え方から脱却できていない人も多いのが実状です。つまり、知識を暗記して正解にたどり着くことはできても、「この方程式は本当に正しいのか」「この実験方法で本当に正しい結果が得られるのか」といった問いには答えられない。こうした思考停止状態を打破するために、初年次教育として「考える実験」のような授業を行っているのです。
ただし、「考える力」「思考力」を評価するのは難しく、その方法を探していました。GPS-Academicは、その評価基準に授業との親和性の高さを感じ、今回の導入に至りました。

point
02

1年次のうちに再度実施し、学生たちの思考力の伸びを検証したい

大学の学びは高校までのそれとは違い、暗記した知識自体よりも、それをつなげて応用していくための思考力が重要です。もちろん、これは医療人をめざす医学部の学生にも欠くことのできないもの。例えば、血液検査の結果やX線画像を見て、さまざまな病気の可能性を検討し、患者の声や別の検査の結果を分析・解析して原因を突き止めていくプロセスでは、批判的思考を繰り返し、常に論理的に判断していくことが求められます。そして、そのプロセスは化学及び化学実験の授業で「なぜ?」を追究していく取り組みと根は同じと言えます。
今後は、1年次のうちに再度GPS-Academicを実施し、思考力の伸びを検証したいと思っています。その結果を「考える実験」をはじめとする授業の改善に役立て、医療人にとって不可欠な思考力のさらなる育成につなげていきたいと思います。

受検した学生の声

  • 学生A

    複数の項目に分かれて評価されていたので、弱い点はしっかり補強できるよう意識しながら日ごろの生活を営んでいきたいと思う。

  • 学生B

    自分自身では自分の思考力の優れている部分や不足している部分がわからないため、このように客観的に評価された結果を今後に活かしたいと思った。

  • 学生C

    分析結果から、批判的思考力が低いことが明らかでした。何かの研究をする上で、医師として患者さんと共に病気と闘う上で非常に必要な力です。試行錯誤してこの力を身につけたいと思います。

  • 学生D

    思考力テストは自分に何の能力があって何が不足しているかを日常生活でも結びつけて考える良い機会になったので、個人的にやってよかったと思う。

  • 学生E

    実際の生活でもありそうなケースを想定して具体的な問題を出され、また、記述問題を含めて質問の方向性やバリエーションが多く、より自分の思考力が総合的に評価されていると感じた。このテストによって、これまでにはなかった自分を客観的に知る機会が得られ、大学生活を含む今後の人生において大いに参考にできることが多く、受けることができてとてもよかった。

  • 学生F

    記述式問題の批判的思考力の結果はB評価で、僕は自分の主張を強くさせる思考を行い、読者を納得させるような文章にする力が不十分だとわかりました。結果レポート上の、自分より高い評価を得た解答例と、自分の解答を見比べてみると、それらの解答は自分の解答よりさまざまな視点から言及を行い説得力のある主張を展開していました。今後、問題や現象について考えるときには、1つの仮説や立場に偏らずにさまざまな可能性を考えてそれぞれの立場を照らし合わせて結論を出せるようにしたいと思いました。このように今回の思考カテストでは、物事を論理的に考える上で自分に足りないものは何かがわかり、これからの学習や取り組みの方向性を定めることができ、有意義なものであったと思います。