学生の卒業を見据え
“汎用的能力”の育成にこだわる

教学改善 キャリア教育

教学センター センター長

鳥井 昭宏教授

導入目的

  • 学部ごとの教育の差異を測るため
  • アセスメント実施の拡大のため
  • 学生の“学ぶ力”を高めるため

point
01

アセスメントを通して学部ごとの差異を見る

本学は2016年度からベネッセのアセスメント「大学生基礎力レポート」を実施していました。どのような学生が進路を変更するかなど、学生の特徴や傾向を把握するためです。工学部電気学科と経営学部経営学科でのみ実施していたのですが、他の学部学科でも実施したいと、対象の拡大を考え始めていました。その折に紹介されたのが、GPS-Academicでした。
私は工学部電気学科の教員なのですが、卒業生と話していると、「電気学科で学んだこと以外の仕事もよく任せられます」とよく言われます。専門分野の知識は当然大切ですが、それだけでなく、生涯にわたって学び続ける力や姿勢もまた重要なのです。GPS-Academicが測る汎用的な能力に、そうした学ぶ力との親和性を感じたのが、導入に前向きになった理由です。
また、汎用的な能力とは、特定の学部に限定されない力です。その能力を測ることで、各学部の教育の特性が逆説的に見えてくるのではないか、とも期待しました。アセスメントの対象学部学科を広げていくうえで、これは役立つだろうと思いました。そのほか、汎用的な能力を細かく見た際に、協働的思考力や批判的思考力が学部の各ポリシーとよく合っていると感じた点もプラスに働きました。

point
02

改革はもとより、個別の指導の質も高める

2019年度は、工学部電気学科・応用化学科、経営学部経営学科、情報科学部情報科学科の3学部4学科でGPS-Academicを実施しました。どの学部・学科も実施対象は1年生と3年生の2学年。1年生は入学オリエンテーションで説明を行ったうえで、主に必修授業の中でテストを行ったため、受検率はほぼ100%です。3年生は主にゼミの中でテストを実施しています。学科によってややムラがありますが、最も受検率が低い学科でも全国平均よりは高い状況です。もともとゼミが盛んな大学なので教員が学生に声かけしやすく、かつ工科系の大学ということでCBT用のパソコンを確保しやすいことが受検率に影響しているのでしょう。
実際にテストしてみて、これまで教員の肌感覚に頼っていたことをより客観的に把握できるようになったと感じています。例えば進路に対する学年ごとの考え方の違いもその一つです。アンケート調査を合わせて見たところ、1年生は将来について大学院進学を希望する回答が多く、3年生はより汎用的能力のスコアが高い学生であっても現実的で地に足のついた考え方をしている学生が見受けられました。2019年度3年生の受検では、GPS-Academicの結果を同社が提供する就活支援サービス「dodaキャンパス」に学生の任意でデータ連携をできるようにしました。情報科学部のある学生は、このサービスを利用し、大学の授業で学んだことを自己PRすることで、自動車メーカーからオファーをもらい、内定を獲得することができました。この学生は、当初地元のIT業界を志望していたようですが、全国展開している企業から評価をうけて驚いたそうです。学科での学びやその成果が評価されたようでしたので、学生たちにはこの大学で勉強したことにもっと自信を持って、より高い目標にぜひチャレンジしてほしいと思いますし、チャレンジする学生へのアドバイスをより明確にしていきたいと思います。
もちろん、学生は一人ひとり違う人間です。ただ、アセスメントの結果や学内のデータとかけ合わせた分析を見て、こうした学生の特徴をより把握できるようにすれば、現実の学生への指導も教学改革も、よりよい方向に変えていけるのではないでしょうか。そのためにも、今後もテストの実施を継続し、データを充実させていきたいです。
本学はアセスメントの導入自体は教学センターが主導しましたが、実際にどの学科で実施するかは、興味のある教員に手を挙げてもらって決めました。現在もそうしたアセスメントの活用に積極的な教員同士で、井戸端会議的に意見交換を行っています。今後は分析したデータを携えて、その他の教員の関心も刺激して、草の根的にアセスメントの活用を広げていきたいと考えています。